大志とともに  -自閉症子育て日記-
    第20回 卒園式

 大志の卒園式は2回あった。Y園と幼稚園である。
 どちらの卒園式でも、名前を呼ばれて返事をする場面があり、Y園入園の頃返事ができなかったことを思えば、大志が返事をできただけでも感動の卒園式になるはずだったが、そんなテレビドラマのような展開はなかった。
 Y園の卒園式は、母親と一緒に壇に上がって座っているだけだったが、大志も他の子も退屈なのでぐにゃぐにゃしていた。もともとじっとしているのが苦手な子どもたちなのだ。それでも、順番が前の子は「ハイッ」と大きな返事をして拍手をもらったのに、大志はしらんふりで座っていたので、周りが拍手をするタイミングがつかめないような感じだった。
 幼稚園の方は、教会の礼拝堂で行われた。何度か練習して、本番間近で大志も「ハイッ!」と返事ができるようになったそうだ。それ以外は“騒ぐというより、タコになっています。騒がないのなら、あきていてもその場にいさせようかと思っています”(連絡帳)という状態だったらしい。
 本番でも、少しでも飽きないようにディズニーのチラシを持たせていたが、ぐにゃぐにゃしてやっぱりタコのような状態だった。卒園証書をもらう場面では、ひとりずつ名前を呼ばれて返事をして立ち、横一列5人単位で、前に出て行くのに、5人のまん中の大志は名前を呼ばれても返事をせず、立ちもしなかった。残念。5人目が立ったところで、もう一度、さらにもう一度名前を呼んでくださったが、だめだった。それでも、列が動きだしたので、立ってついていった。
 証書をもらう場面で園長先生がなにやら大志に話しかけた。もう一度名前を呼んでみたらしい。
 大志は、なぜか振り向きながら「大志ちゃん、はい」と言った。自分の名前をオウム返ししながら、一連のパターンで「はい」と言ったようだ。
 そんな感じで式が終わり、大志を連れて先生方にあいさつをしながら、最後の幼稚園を去った。
 卒園式が終わって一段落ではあるが、次は入学式。
 入学式!? 返事さえできないのに? …考えただけで緊張してしまう。




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