大志とともに  −自閉症子育て日記−
    第18回 就学時健診

 「ご父兄の方は、この部屋でお待ちください」とのことで、子供たちだけが6年生の引率で、控え室から5人ずつ並んで教室を出て行った。大志の番がきたが、ひとりでは行かせられないので、私は列についていった。
 健診では、歯科、内科、視力、問診の4つの教室を回る。
 6年生の女の子が「ついてきてね」と歩き出したが、大志はきょろきょろしたり違う方向へ進んだりで、最初は列についていけなかったので、私が促した。内科を過ぎたあたりからわかってきたようで、多少遅れてもついていくようになった。大志が教室に入ったときは、私は廊下から様子を見ていた。
 歯科では、「あ〜ん」と言われても大志はすぐには口をあけなかった。それをきっかけに、先生が待っている子どもたちに口をあける練習をさせていた。
 内科では、上半身はだかになったが、上級生が服を脱がせたり着せたりして、大志が抵抗しなかったので、普通の子とかわらなかった。
 おもしろかったのは視力。先生が、「線の切れている方を指さすんだよ」と練習させても大志だけやろうとしない。大志は後回しになった。
 4人が終わって「さて、問題の子だな」と言いながら名前を呼んだら、そっぽを向いて座っていた大志が立って先生の方へ歩いた。しかし、ついに指さしはできなかった。
 そして問診。「お名前は?」と聞かれても応えない。再度「お名前は?」と聞かれると「クモル」。「お名前言えないの?」に「プリントアウトスル」。横にいた6年生が「こいつ馬鹿だ」と笑う。
 さらに大志は「ウィンドウズの場合はコントロールキューを…」とパソコンソフト"ことば図鑑"の操作説明のセリフを呪文のように言い始め、えんえんと続けた。すると、さっきの6年生が「すんげぇ!」と驚いた。
 先生が廊下に出てきて「この子はこういう状態ですか」とメモを見せた。「まだ会話もできない状態である」旨書いてあった。
 「自閉傾向があると言われてます」と答えると、「第二問診を受けていただいていいですか」。
 覚悟してきましたから。




トップページへ戻る次へ


@nifty ID:CQS02257