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1歳になって、立って歩けるようになると、散歩につれていくようになったが、前へ前へと進むばかりで、まわれ右して来た道を戻るのをいやがった。 ひたすら前進あるのみ。「ずいぶん前向きな子だな」と思ったわけではなかったが、やむなく回り道をして、前進で家にたどりつくコースを歩いたりした。 どんどん進んでいく大志に、「たいしー!」と名前を呼んでも振り向くこともない。水たまりや側溝の水を発見すると、石を拾ってポチャンと投げる遊びにはまる。何十分やっても飽きない。 いちばん驚いたのは、ドーベルマン犬の檻の前を通るときに、ワンワン飛び跳ねながら吠えているのに、大志はしゃがみこんでその様子を見ながらゲタゲタ笑ったときだった。それって、怖がって泣くとか、親に抱きつくとかする場面じゃないの?こわいもの知らずって、こういうことかしら。独特の感性だなー、と。 ことばはなかなか出なかったが、「ハァイ」と返事ができるようになったので、おもしろがって「かいぶきたいしく〜ん」「ハァイ」と、そればかりやっているビデオが残っている。 そのうち、ブツブツと何語だかわからない意味不明の独り言が出るようになった。私は「日本語覚える前に韓国語覚えちゃったよ」と言ったものである。 また、気に入らないことがあると、パニックになって、えびぞって床に転がった。「この子、すごいごんぼほりだの!」と、おばあちゃん。仏様の時代はあっという間だった。 1歳半を過ぎると、小児科の先生が、大志のことば数が増えないのを気にするようになった。そして、2歳になったときにこの先生が「2歳を過ぎてもことばが増えてこないから保健所なり専門機関に相談に行った方がいいよ」とアドバイスをくださった。ことばの遅れだけでなく、「視線が合わないし、落ちつきがなさすぎる」。 この医者のアドバイスが、自閉症を持つ大志とともに歩むわが家の歴史の始まりだった。 |
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