た い し ダ ヨ リ ー  ★6年生編★
    第222号 スイミングに通うぞ



◆パパのスリッパも

 たいしを病院に連れていったとき、玄関で「おとうさんの分もスリッパを出してちょうだい」と言ったら、ちゃんとふたつ(1足)並べておいてくれました。
 体温計も脇の下にはさむし、おとなしく絵本を開きながら待合室で待てます。名前を呼ばれてもすぐに反応しませんでしたが、「ほら、いくよ」と促すと、立ち上がって診察室に行きました(本は持ったまま)。お腹に聴診器をあてても背中に触っても、のどを見るために口に器具を入れても、おとなしく座ってます。
 手がかからなくなったよなー、としみじみ。


◆締め付けが好き

 アメリカのテンプル・グランディンさんという、大学の助教授や会社の社長もなさっている自閉症の方がいます。この方が書いた本の中に、からだを締めつけられるとリラックスできた旨のことが書かれています。
 私がソファーに腰掛けてテレビを見ているときに、たいしが両膝の間に入ってきたので、試しに膝で締めつけてみました。すると、嫌がるどころか、締め付けをやめたら「モットヤッテ」と両腕で私のひざを抱えました。テンプル・グランディンさんと同じような感覚があるようです。

◆ボク、ユメヲミテイタヨ

 たいしが突然笑い出すことがよくあります。思い出し笑い。
 ですが、その日ママと一緒にいたときに、突然ゲタゲタ笑い出したと思ったら、「ボク、ユメヲミテイタヨ」と言ったそうです。おいおい、昼間っから何寝ぼけてんだい、と言いたいところですが、でもこれは、たいしの中で、空想(ファンタジーの世界)と現実の区別がついてきたということでもあるような気がします。
 ただ、ひょっとすると、眠っているときの夢と空想の感覚が似ていて区別がはっきりしないということはあるかもしれません。


◆会話でスケジュール調整

 土曜日の朝。ママが「たいしくん、今日はどこに行くの?」と話しかけると、「ツタヤデス」。「じゃあ、おとうさんにお願いしなさい」「オトウサン、ツタヤニツレテッテ」。
 「じゃあ、9時半出発で歩いて行くぞ」と私がこたえると、「チョットマッタ! ムシキングガ○×△□・・・」「ムシキングは何時から?」「9ジハンデス」「そっか、じゃ、ムシキングが終わったら出発ね」。
 ということで、スケジュール調整の会話ができました。


◆スイミングに通うぞ!

 一学期は、こうくんが帰った午後の時間やこうくんの休みの日に、なかがわ先生がプールの時間を増やして、たいしが泳げるようになるように力を入れてくれました。そのおかげで、たいしは、足をつかずに50m泳げるようになったそうです。もうちょっとで25mというところまで泳いだ場面はママが撮ったビデオで見ましたが、その後、50mまでいけたそうです。
 さて、そこで、夏休みに民間のスイミングスクールに通ってみたらどうか、という提案が先生からありました。できれば、親からも先生からも離れて、知っている人がいないところで指導を受けさせてみましょう、と。
 そこで、ママは二つのスイミングをリサーチ。で、一方には、知っている子がいるので、ちょっと条件が合わないかな、ということで、ヤクルトスイミングの方に試しに行ってみることにしました。
 一般に開放するのは、日曜日の14:30から16:30ということで、私も行きましたが、プールに入るのは、たいしだけ。
 たいしは、もはや飛び込もうとはしません。そーっとプールに入り、あとは、もぐったりジャンプしたりはしゃいでいます。
 ママが「なんか手を振っている子がいる」と言い出し、「るかちゃんだ、たいしと一緒のクラスにいた子で、転校した子」。その子は、女の子3人で遊んでいましたが、たいしが近づくと、「あたしのこと覚えてる?」とかなんとか声かけしたようです。たいしは愛想なく通り過ぎます。
 たいしが水面のコースを仕切るロープを越えて隣にはいると、監視員の方から注意を受けました。たいしは、自分が注意を受けているとわかったようで、すぐに開放されているエリアに戻りました。
 たいしは、奇声をあげたりしているので、そっちこっちで注視されましたが、そのうち、小学校中学年くらいの女の子のグループが、たいしをばいきん扱いし始めました。たいしが近づくと逃げる、水をかけるなど、意識的にやっているのがわかります。たいしの方は、マイペースで、その子たちが足で水をばしゃばしゃするとそれをマネしてみたり、関係なく遊んでいたり。
 一方、るかちゃんのグループは、たいしが興味を示した青いかけら(コースのロープからたいしがかじりとったウレタン)を持って、たいしが取りに来るのを面白がったりして遊んでくれました。また、女の子3人が、ジェンカのようにタテに並んで通りかかると、たいしが「ボクモ」というように後ろの子の肩に手をかけた場面もありました。
 まあ、スクールに通って指導を受けるようになっても、なんとかなりそうな感触ですね。


★今回のプールでの様子を見て思ったんですが、たいしの理解者はたいしが作ってきてるんだな、と。たいしのような子を初めて見る子は、どう考えたって「変な子」「気持ち悪い子」などの印象を受けるので、ばいきん扱いするようになったって、おかしくない。でも、たいしと同じクラスにいた子は、この子はこういう子なんだと受容できる。おそらく、たいしでなくても、たいしのような子どものことを同じように受け入れることができるでしょう。それがきっと、障害者と共に生きる社会の芽生えになっていくんだと思います。



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