大志のひとり通勤練習 
   〜社会の一員になるために、過酷な試練を乗り越えるぞ!〜
    8 本番(現場実習ひとり通勤)2週目
 土日をはさんで後半戦に入った6日目。雨降りの天気でしたが、行きも帰りもなんとかうまくいきました。

 7日目。もうだいじょうぶだろうと思ったママは、家でイマドコサーチで見守ることにしました。
 帰りの青森駅前からの連絡の様子がちょっとへんだったそうです。「ガンダムが○×&%#・・・」「ぼくの後輩たちが#$%&・・・」と、ちょっとパニックモード。大志が蛍ヶ丘でバスを降りる時間にママが迎えに行くと、ちゃんと降りてきました。
 私が仕事から帰ってから大志に聞いてみると、「運転手にきらわれたんだ」「降りる直前だ」と。
 それ以上話してくれないので、「何があったのか絵を描いて見せてください」と宿題を出しました(前にそれで様子がわかったことがあったので)。やがて、描き上げて、持ってきて見せてくれた絵は、全然関係ない、アニメの絵でした。
 とすると、憶測するしかないわけですが、例えば、大志の独り言のボリュームが大きすぎて、降りるときに「バスに乗っているときは静かにしてね」というようなことを言われたのかもしれません。
 ママが心配して「明日の帰りに、油川新井田の一つ前のバス停から乗って様子を見ようかな」と言いましたが、「世間の人から直接叱られることは本人にとって一番勉強になるんだよ。今やっているのは、親のいない状態で行動することを経験することでもあるんだ」と、私は答えました。もしも大きな問題を起こしているとすれば、学校にも連絡があるでしょうし、大志がバスの乗車をいやがらないようなら、今日の出来事がトラウマになることでもないでしょう。

 8日目、9日目は大きな出来事は特になく。
 ただ、9日目の帰りに、雨が降る中バスが来るまでまだ1時間以上あるということで、「今日は、車で拾っていってもいい?」とママから私に電話がありました。
 「携帯に電話してみて、大志が車で帰るって言ったら、少し間をおいて迎えに行けば」と、一度は言ってみたものの、「ちょっと待てよ。あと2日なんだから、自力でやらせた方が達成感があるんじゃないか?」ということで、ママも「そうだよね。私も1時間待ちます」。「そうそう、それが自立へ向けた支援だよ」

 大志くんがんばりましたねー、ついに最終日です。
 この日の朝は、ママは家で待機しておりました。ところが、9時過ぎの大志から電話でまたも平和が破られました。「油川下町にきたんだ」。
 「今どこにいるの?」ときくと「ここです」(居場所を説明する練習も必要かも)。
 イマドコサーチで検索すると、大志はどうやら、油川新井田で降り損ねて次のバス停まで行っちゃったようです。
 「じゃあ、お母さんが迎えに行くからそこで待っててね」。
 そして、遅れるかもしれないと実習先にも電話(今思えば大志がT印刷に電話する絶好の機会でしたが、そのときは余裕がありませんでした)して、ママが車で油川新井田の次のバス停まで行きましたが、大志はいません。携帯にも大志は出ません。次のバス停、その次のバス停にもいません。
 もしや、と実習先に電話したら、「あれ!? さっき見かけましたよ」とのこと。どうやら、独力で、バスの通り道を引き返してT印刷にたどり着いたようでした。
 SOS発信後に自力で問題を解決したら、その報告をすることも教える必要がありそうです。

 さらに、帰りのこと。ママが、様子を見にバス停に行ったらまだいなかったので、T印刷の近くに停車。15時25分頃玄関を出てきた大志が、リュックの中を何やら探してまた戻って行きました。あわてたようにもう一度出てきて、そこでママに携帯連絡。様子を見ていたママが、「忘れ物ありませんでしたか?」ときいてみたら「ありません」という返事。
 ママは、大志がうそをついたと思ったようですが、大志にしてみれば、その時点では取りに行ったあとなので、既に忘れ物はないわけです。
 さらに、バスに乗り遅れまいとあわてている大志に、「まだ、あわてなくてもバスには十分間に合うよ」と言うと、「そうか」と安心した様子だったとのことでした。

 今回の通勤支援を通じて、子どもを自立させるということは、本人が自力でやろうとすることに、どこまで親が手を出さずに見守れるかということなんだなーと、実感しました。
 大志を車で拾っちゃえば簡単だし早いし、でも、毎日長い時間見守りに徹したママもがんばりました。
 遠距離を移動することだけが目的なら車で拾いますが、目的は大志が自力で移動すること。手を出したら、親が大志の自立の芽をつぶすことになります。
 今回は、大志も私たち親も非常にいい経験になりました。終わり。




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